引き直し計算-借金が減る仕組み-
実際の金利と法定金利
従来のサラ金等の貸金業者が貸付を行う際の利率は、29.2%等利息制限法という法律で決められている上限を超えていることが多くありました。
利息制限法で定める利率の上限は、次のようになっています。
借入の額 | 利率の上限 |
---|---|
10万円未満ならば | 20% |
10万円以上100万円未満なら | 18% |
100万円以上ならば | 15% |
貸金業者が、利息制限法を超える利率での利息を有効に取得するには、一定の条件を満たす必要がありました。しかし、その条件を満たしている貸金業者はほとんどなかったため、利息制限法に定める利率を超える部分については、本来「払いすぎ」ということになります。
この払いすぎた金利については、まずは残っている借金の元金に充当されることになります。そして、元金がゼロになり、さらに払い過ぎてしまったものを「過払い金」といいます。
このような説明は最近ではよく見かけるものとなりましたが、具体的にどのような処理がなされるのかについては、なかなか分かりにくいものだと思います。そこで、法定金利を超えた金利での借り入れを利息制限法所定の金利で計算をし直す場合、つまり引き直し計算の方法について説明します。
具体例
- 100万円を年利29.2パーセントで借りて一年後に返済した場合
29.2%でお金を借り、一年後に返済する場合の利息は、29万2千円ですから、返済にあたっては、129万2千円を支払うことになります。しかし、利息制限法では100万円の借り入れに対する金利は、15パーセントが上限ですから、正しくは115万円までしか支払う必要はないということになります。このときの、14万2千円は払いすぎということになります。
- 平成10年1月1日に100万円借入 年利29.2パーセント
毎月25日に3万円ずつ支払っていく場合
(1) 年利29.2%で計算した場合。
まず、初回の返済日、平成10年1月25日に3万円を返済した場合について考えてみます。
初日からの日数は24日ですから、利息は100万円×29.2%×24日/365日=1万9200円となります。
返済にあたっては、まず、利息の支払いに充てられます。
利息を支払った残りは、
3万円−1万9200円=1万800円となるので、
初回の返済後の借入金の残りは、100万円−1万800円=98万9200円となります。
(2) 利息制限法に基づいて15パーセントで計算した場合
同じように利息を計算すると、100万円×15%×24日/365日=9863円となります。年利29.2%の場合と比べ、約1万円分の利息が払いすぎです。
この場合も、まずは利息から支払うことになりますから、利息を支払った残りは、
3万円−9863円=2万137円となります。
このお金は全部、元金の返済に当てられますので、手元には戻ってきません。正しい残高は、100万円−2万137円=97万9863円となります。
長期にわたり取引をすると
上述の事例で、約定金利(29.2%)で取引を続けて行くと、以下のようになります。
取引日 | 借入額 | 返済額 | 日数 | 利息 | 元金充当額 | 残高 |
---|---|---|---|---|---|---|
H10.01.01 | 1,000,000 | 0 | 1,000,000 | |||
H10.01.25 | 0 | 30,000 | 24 | 19,200 | 10,800 | 989,200 |
H10.02.25 | 0 | 30,000 | 31 | 24,532 | 5,468 | 983,732 |
H10.03.25 | 0 | 30,000 | 28 | 22,035 | 7,965 | 975,767 |
H10.04.25 | 0 | 30,000 | 31 | 24,199 | 5,801 | 969,966 |
(中略) | ||||||
H13.05.25 | 0 | 30,000 | 30 | 14,629 | 15,371 | 594,177 |
H13.06.25 | 0 | 30,000 | 31 | 14,735 | 15,265 | 578,912 |
H13.07.25 | 0 | 30,000 | 30 | 13,893 | 16,107 | 562,805 |
H13.08.25 | 0 | 30,000 | 31 | 13,957 | 16,043 | 546,762 |
三年半以上取引を継続しても、まだ半分以上の元金が残っています。
今度は、利息制限法の上限金利を適用し、年利15パーセントで計算していきます。
取引日 | 借入額 | 返済額 | 日数 | 利息 | 元金充当額 | 残高 |
---|---|---|---|---|---|---|
H10.01.01 | 1,000,000 | 0 | 1,000,000 | |||
H10.01.25 | 0 | 30,000 | 24 | 9,863 | 20,137 | 979,863 |
H10.02.25 | 0 | 30,000 | 31 | 12,483 | 17,517 | 962,346 |
H10.03.25 | 0 | 30,000 | 28 | 11,073 | 18,927 | 943,419 |
H10.04.25 | 0 | 30,000 | 31 | 12,018 | 17,982 | 925,437 |
(中略) | ||||||
H13.05.25 | 0 | 30,000 | 30 | 1,162 | 28,838 | 65,473 |
H13.06.25 | 0 | 30,000 | 31 | 834 | 29,166 | 36,307 |
H13.07.25 | 0 | 30,000 | 30 | 447 | 29,553 | 6,754 |
H13.08.25 | 0 | 30,000 | 31 | 86 | 29,914 | -23,160 |
約定金利で計算すると元金の半分以上が残っている一方で、法定金利で計算すると、およそ3年半で完済になっています。
このように、金利が大きく異なると、借金の減り方にも大きな差が生じてきます。
さて、利息制限法に基づいて計算した表の最後を見ると、−2万3160円となっています。
これは、借金がゼロになった状態でさらに返済をしたからマイナスになっているのです。これがいわゆる「過払い金」と呼ばれるもので、これ以後の返済は、すべて「過払い金」となっていきます。このお金というのは、貸金業者へ返還を求めることができます。
以上のような理屈で、長期にわたって支払を続けると、多額の過払い金が生じることがあるのです。